2024.9.3
約30年もの販売実績を誇る
三省製薬の育毛有効成分『CTP(6-ベンジルアミノプリン)』 vol.1(全3回)
三省製薬は、これまで数々の美容成分の開発を行ってきましたが、その中でも特に高く評価されているもののひとつが育毛成分『CTP(シーティーピー)』です。1995年に厚生省(当時)から有効成分として承認された後、現在に至るまで約30年もの間、育毛成分として活用され続け、累計500万本以上もの販売実績があります。今回は、『CTP』がどのように開発されたのか、その経緯についてご紹介いたします。
三省製薬の美容成分を代表するコウジ酸が、美白有効成分として日本で初めて承認されたのは1988年のこと。以来、コウジ酸は美白のスタンダードとして国内外に供給されるようになりました。
そんなコウジ酸に続く次なる有効成分“ポスト・コウジ酸”を開発したい。三省製薬はそのように考え、1990年から白髪防止効果を持つ新規有効成分の開発に着手しました。期待を込め、約500種類もの素材を評価しましたが、白髪防止に役立つ成分は見つからなかったのです。しかし、あきらめずに研究を続け、たまたま試薬棚にあった『CTP』を評価したところ優れた育毛効果があることを発見しました。
下の写真はマウスのひげ毛包を使って評価した実験で、
『CTP』入りで培養した方が明らかに毛の伸びが早いことがわかります。
CTP入り培養の方が、毛が太く、長く伸びている。
『CTP』は植物細胞を元気にする働きがあり、蘭の開花やリンゴの果実の成長を促すなど農業の分野で広く使われている成分です。大根の葉を用いた実験では、植物の老化を防止する作用があることもわかっています。
『CTP』に毛を伸ばす作用があることに気づいてから本格的に有効性を示すため、ヒト試験を行い、脱落毛(抜け毛)の総数計測や臨床観察による判定などを行いました。1990年代は、まだ現在ほど技術も発展しておらず、脱落毛を数えるのはすべて手作業。排水溝にストッキングを4重にかぶせて、太い毛から軟毛まですべてを数えるという、気の遠くなるような作業の評価を重ねた結果、驚くべき効果がわかりました。
プラセボローションと『CTP』配合ローションの臨床試験では、プラセボローションにグリチルリチン酸・サリチル酸・酢酸トコフェロールなどの有効成分を配合しており、プラセボローションも育毛剤としての機能を有するものでした。しかし、結果は従来の育毛剤に近いプラセボローションが7%であったのに対し、『CTP』配合ローションは47%。いかに『CTP』の効果が高いかがわかります。
シャンプー時の抜け毛抑制効果を調べた試験では、『CTP』配合ローションは8週間後で直径40μm以上の太い毛の脱落毛数が減少傾向になり、16週間後で有意に減少させる結果となりました。直径40μm以上の太い毛の密度は、頭髪の外見に重要であるとされています。『CTP』は軟毛ではなく成長期にある太い毛髪の抜け毛を減らすため、頭髪の外見維持の効果が期待できます。
これらの試験を重ね、ついに1995年に『CTP』は厚生省(当時)から有効成分として承認されたのです。
試験の結果から、『CTP』には毛の成長期を長くする効果があるのではないかと推測ができましたが、1990年代当時には、まだこの推測を裏付ける方法がありませんでした。
次回、遺伝子工学の発展によってついに判明した『CTP』の作用機序についてご紹介いたします。